(旧HP巻頭エッセイ29) 2020年10月 目に見えない価値 原田 俊一

 日本経済新聞では独自の事業として、10名の専門家による 「伝統の技が光る木造の橋10選」を令和2年春に実行された。  その結果、2位の宇治橋・3位の鶴の舞橋(青森県)等に圧倒 的な差をつけて第1位に錦帯橋がランクされた。その理由は、 伝統の技が強くて柔らかい姿を継承し自然に融けこんでいる。 造形が美しく、日本の木橋技術の粋を体現した橋である等など高く評価されたものです。 

 昨年3月に行われた錦帯橋の国際意見交換会では、文化遺産としての評価基準に周辺の景観や自然との調和を評価すべきであるとか、橋を昔ながらの形に継承するための型板・古地図それらを保管する施設そして市民のサポートなど目に見えない無形の価値が大きなキーワードであると意見が提案された。 

  目に見えない価値としての市民の関心度を示す尺度はなかなか 見当たりません。この度、有志団体「岩国吉川会」がその事業として岩國市内の小・中・高校生を対象に「錦帯橋の魅力」のテーマで岩国市教育委員会の後援を得て短歌を募集しました。

  その結果、853首の応募があり、その内容は錦帯橋の目に見えない価値を実に具体的に表現し、周りの自然環境との融和を説きそして錦帯橋と共に生きていることを詠んだ秀作が多くありました。これほど地元の木の橋に愛着と誇りを享有する幼い市民がいる処はないと思い知らされました。

 

参考までに宝の一部紹介

 

錦帯橋わたっていると水の音涼しい風が空をおよぐよ

 

錦帯橋四季を彩る木々たちに負けず劣らず和に溶け込むよ

 

   桃色のつつじがさいてすんだ川錦帯橋の絵を描いている

 

雪の日に意外と滑る錦帯橋しりもちついて友と笑い合う

 

毎日の学校へ 行くぼくの背をおくってくれる錦帯橋

 

いわくにの歴史みまもる錦帯橋この地でともにいきてゆく

 

錦帯橋作った人の根性がその姿からつたわってくる

 

傷付きて下りし水辺で顔を上げ故郷の橋のありがたきかな

 

弓張りの五連の橋は華麗なり四季折々の衣着るよう

 

     

幼い児童・生徒たちは錦帯橋と共に過ごしている。このように 目に見えない価値を具体的に物語ってくれるのが短歌であることを再認識しました。

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