(旧HP巻頭エッセイ38)2021年8月 運転免許返納 千家 統子
50年近く前のNHKの「みんなのうた」で「自動車になったかめの歌」というのがあったのをご存じだろうか。亀が誰よりも速くなりたいと思い、町まで1年かけて歩いて行って、タイヤと100馬力のエンジンを付けてもらい、森中をブロ~ンブロンブロ~ンと走り回るが、衝突7回けが6回で、大事な尻尾をなくしてしまう。これは大変とタイヤを外してもらい、パフパフパ~フと足で歩いて森に帰っていくと言うストーリーで田中星児が歌っていた。アニメも楽しく軽快で結構好きだった。
そろそろ免許を返納しようかと考え始めた頃この歌を思い出した。
35年間持っていた運転免許証を先日返納した。
最後の5年間は車を手放したのでほぼ運転はしていないが、車は15年ずつ2台所有した。自分で運転してそれなりに便利に生活はしていたが、手放したら気分がさっぱりしたのを覚えている。30年運転していたのに車の歌はほとんどない。車庫入れに失敗したり、鍵の閉じ込めをしてJAFのお世話になったり、免許取りたての頃同乗した父に「当分お前の車には乗らない」と言われことなど、エピソードは多々あるのに何故だろうか。結局運転を楽しんでいなかったのだ。運転するのに精いっぱいで、余裕がなかったのだ。運転に向いていないこと甚だしいということに今頃気が付いた。短歌の締め切りが迫れば何でも頭の引き出しから引っ張り出すのに、運転や車は関心の外だったようだ。
警察署に行くなどめったにないので、ちょっとどきどきしながら新築移転した警察署に行った。以前の建物は暗く重い感じがして、こわもての警官が警杖をもって門番にたっていてとても 気軽に入れそうもなかった。(気軽にいく必要もないのだけれど)ところが今回、門番はおらず自動ドアがサーッと開いてガラス張りのロビー、受付は、明るく普通の役所のようで、係りの男性もとてもソフトで役所より親切。これは免許返納をしてくれる人だからと喜んでのことか、病み上がりの私がたいへん婆-さんに見えたので丁寧に説明しなければと思ったのか、少々釈然としなかったが、ここは素直にハイハイと言われたとおりに書類を書き、運転経歴証明書の後日の 受け取りを確認した。
NHK全国短歌大会の特選歌に次の歌があった。
ゴールドの運転免許を返上し二足歩行の人間に戻る
野々村学
私も事故を起こさずゴールド免許で終わることができて本当によかったと思っている。
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